性魔術
魔術儀式の一環として、あるいは各種魔術的結果を実現するための補助的手段として、性エネルギーを利用したり、儀式的性交を取り入れるなど、性的要素を含む魔術体系を全般に性魔術と呼ぶ。
豊穰儀礼と関わる性器崇拝は、古代から世界各地にあり、古代中国の房中術も、性交渉と不老不死を関連づけたものであるが、性行為を魔術的に利用する傾向が顕著になるのは、インドで生まれたタントリズム以後である。
タントリズムは本来、シヴァ神とその妃であるシャクティとの対話形式の教えである「タントラ」を奉じるヒンズー教の一派を指すが、左道、あるいは左手道と呼ばれる一派は、シャクティを性エネルギーの意味と解釈し、意識的に性欲を刺激する行為儀式に取り入れた。
中世ヨーロッパでは、魔女が、サバト(魔女集会)やワルプルギスの夜(五月祭が行われる5月1日の前夜)などに悪魔と性交を行うとの主張も見られ、17世紀のフランスで盛んに行われた黒ミサでも、祭司が祭壇役の女性と交わるなどの行為が取り入れられた。
しかし、現代まで連なる欧米の性魔術体系は、ドイツのカール・ケルナーが東方聖堂騎士団に左道タントリズムを取り入れたことに始まる。
東方聖堂騎士団はドイツ以外にも支部を広げ、そのイギリス支部ミステリア・ミスティカ・マキシマを設立したのがクロウリーである。
アメリカでは、ラヴェイが設立した悪魔崇拝団体であるサタン教会なども黒ミサを行っている。