ヴードゥー
生きた死人ゾンビで有名なヴードゥーは、カリブ海の島国であるハイチで、広く信仰されている民間信仰で、現代でも社会的に強い影響力を維持している。
ヴードゥーについては、アフリカから来た奴隷たちの持ち込んだ各民族の宗教とローマ・カトリックとが結合したものという説が一般的ではあるが、アメリカのウエイド・デイヴィス博士などは、ローマ・カトリックの影響はほとんどないと述べている。
唯一神の存在を認める点では、ヴードゥーもキリスト教徒同様である。ヴードゥーでは、この唯一神が、「ロア」と呼ばれる様々な霊の形となって人間と関わると信じられている。そこでヴードゥーの儀式では、このロアと接触し、ロアを正しく祭ることが重要となっている。
ヴードゥーの儀式を主催するのは、ウンガンと呼ばれる神官、あるいはマンボと呼ばれる女神官で、ロアを呼び出す場合は歌と踊りを中心とした儀式を行い、その熱狂が頂点に達するとロアが神官や信者に憑依し、神託を下したり問題の解決法を教えたりする。
ウンガンは、カンゾ、ウンシ・ボサルと呼ばれる信者の日常的な相談にものる。信者は、聖職者としてロアの儀式に関わり、新来の者がウンシ・ボサルで、上級になるとカンゾと呼ばれる。
一方で、邪悪な力を操るボコールと呼ばれる魔術師も存在する。ボコールは様々な呪文や粉末、さらには超自然的な存在を操り、ときには悪魔と契約を結んだり、自ら他の動物に変身したり、さらには死者の霊を敵に差し向けたりする。人をゾンビにするのも、こうしたボコールである。ウンガンを兼ねることも多い。