エレメント
自然界の万物を構成する基本的な要素のことをエレメントと呼ぶ。
ギリシャ哲学では万物の変化・流転は1大命題として扱われ、多くの哲学者により万物の構成要素としてエレメントの概念が論ぜられた。
古代ギリシャのタレスは万物の根元にアルケーという呼名を与え、それを水であリ、大地は水の上に浮かんでいるとした。
その他、ピタゴラスは数をアルケーとし、デモクリトスはアトモス(不可分体)こそがアルケーであるとした。アナクシマンドロスは、無限定者がアルケーであると考えた。
エンペドクレスはアルケーが水・空気・火・土の四つのリゾーマタからなるという後世にいう四元素説を唱えた。
アリストテレスはこれら四元素説を継承した上で、四つのリゾーマタは相互に変換できるものと考えた。
西洋占星術においても、12星座はこの4つのエレメントに振り分けられ、また万物がこの4元素から構成されているとすれば、その比率を人為的に変化させることで、卑金属を貴金属に変えるという錬金術も理論的に可能となる。
さらにこうした地水火風の4元素の他に5番目の元素を想定する場合もある。この第5元素こそ万物に浸透し、生命を与える存在であり、実体がなく不可視のものとされ、錬金術においては後に賢者の石とも同視された。
自然現象の背後に様々な諸霊を想定したパラケルススは、こうした四大元素にもそれらを支配する精霊を特定した。彼によれば風の精霊はシルフ、水はウンディーネ、火はサラマンダー、地はノームであり、こうした精霊を支配することができれば、自然界の事象を思うままに操ることも可能となる。
古代中国においては、万物は陰と陽の2つの要素が生成・流転するという陰陽説と木火土金水の5つの要素を万物の根源として想定する五行説とが結びついた陰陽五行説が中心的な学説となっている。