ロンギヌスの槍
ロンギヌスの槍とは、ゴルゴダの丘で十字架にかけられたイエス・キリストの死を確認するために、あるローマ兵がイエスの脇腹を刺したとされる槍。『新約聖書』の「ヨハネによる福音書」第19章第34節に記述されている。
福音書には、この兵士の名は記されていないが、後世の伝説では、この兵士の名はガイウス・カシウス・ロンギヌスとあり、この槍は「ロンギヌスの槍」と呼ばれるようになった。
「この槍を持つ者は世界の支配者になれる」との伝説があり、9世紀のカール大帝が片時も離さず持ち歩いていたもので、この槍の力で大帝は千里眼の力を得、戦いに常に勝利したという。
その後この槍は、ザクセン王家の始祖である捕鳥王ハインリッヒ1世の手に渡り、ザクセン王家から次のホーエンシュタウフェン家に譲り渡された。ホーエンシュタウフェン家のバルバロッサことフリードリッヒ1世もまた、槍を持ち歩いて領土を拡大したが、シチリアで川を渡る際槍を落とし、その数分後に死亡した。
ナチス・ドイツの総統アドルフ・ヒトラーもこの槍に関心を持っていた。1938年のオーストリア併合により、ヒトラーはこの槍を含めたハプスブルグ家の財宝を聖カタリーナ教会のホールに保管した。連合軍のニュルンブルク攻撃が激しくなると、特別にしつらえた地下保管庫に移したが、1945年4月30日、この槍はついに連合軍の手に落ちる。同じ日の夕刻、ヒトラーはベルリンの地下壕で自殺した。
宗教的には、イエスの血に触れたものとして尊重されている聖遺物として、実際には何本かの槍がロンギヌスの槍として伝えられている。