ゴーレム
ゴーレムとは本来、ヘブライ語で「不完全な存在」を意味する。聖なる言葉の力である種の生命が注ぎ込まれた土人形。
何人かのラビがゴーレムを作ったとされる。ラビとは、ユダヤ教に於いて宗教的指導者であり学者でもあるような存在。
ゴーレムの名はもともと、神がアダムをつくるため息を吹き込んだ形のない粘土に与えられたものだが、ゴーレムが人工的に生命を与えられた土の像を意味するようになったのは、中世のことである。ユダヤ教の口伝伝承である『タルムード』には、ラバなる人物が1人の人間を作ったとの伝承が伝えられている。
ゴーレムの作成は、神が人類の祖アダムを想像したのにならい、土と水をこねて人形を作り、これに生命を吹き込むことで完成する。
生命を吹き込むにあたっては、神の真の名や神聖4文字(神の名を4文字の略語としたもの。ローマ字ではYHVH)を記した紙片をゴーレムの口に入れたり、耳に挟んだりする。あるいは額に4文字のヘブライ語emet(真実)を書き込んだりする。
ゴーレムは怪力を持ち、姿を変えることもできれば、風のように空中を漂うこともできたが、主人の命令に従い、どのような難しい職務でもこなす。ゴーレムの奉仕をそれ以上望まないとき、ラビたちは口中や耳の紙片を取り去ったり、額の最初の文字を消す。そうするとemetはmet(死)となり、ゴーレムは元の土くれに戻る。